教育学部の紹介

学部長のご挨拶greeting

九州大学 教育学部長
田上 哲

 九州大学教育学部は、1925(大正14)年に設置された九州帝国大学法文学部教育学講座を前身として1949(昭和24)年に開設され、本(2024)年度に学部開設から75周年を迎えました。九州大学教育学部は、旧帝国大学に設置された「教員養成課程ではない」教育学部として、教育学と心理学を両輪とした教育を通じて、大学・研究機関で従事する研究者、官公庁、民間企業で働く高度専門職業人、学校教育現場で活躍する教育者など、教育と心理に関わる多彩な人物を輩出してきました。

 本教育学部は2018(平成30)年9月に箱崎から伊都キャンパスイーストゾーンに移転し、新たに歩み始めたところでコロナ禍に見舞われました。それから現在に至る間、世界においては一層のグローバル化や分断化が進み、人類史的な課題があらわになってきました。このような状況下で、形式的なものとしてではなく、真の意味でのDiversity & Inclusionを、自己の内側に統合し社会に実現していくことを目指し、知と実践を切り離さすことなく粘り強く物事に取り組んでいくことがとても重要になります。そこでは自らがよって立っているこれまでの常識を疑うことも必要です。「自分の足元を、あえてみずから揺るがしてみることのできる知性と勇気を持った人間を育てたい。」これは私の恩師が師事した、戦後初期から深く教育に関わってきた学者の言葉です。

 教育は、社会的課題の解決に協働して取り組み、新しい社会と歴史をつくっていく人間を形成する、学際的で具体的な営みとして考えることができます。同時に教育は、とりわけ学校教育のような公的な教育は、現在の政治や経済から影響を受け、そのための手段として考えられることもあります。しかしながら、未来の政治や経済に取り組む人間を育てるのは教育です。また、これからの社会に大きなインパクトを与えるであろうAIは、ものごとを1から積み上げていくことについては非常に優れていますが、0から1を創造することができるのも人間です。学生の皆さんが豊かな創造性を有する人間として、言い換えれば、何者かによってつくられた情報に踊らされることなく、様々なデータを自らが適切な情報としてまとめ上げ、実際の社会の変革・創造に活かしていくことのできる人間として成長することを期待しています。そのために皆さん一人ひとりの学修・研究が自由闊達に進むよう、これまでの九州大学教育学部の伝統における本質を見極め継承するとともに、因習的なものを退け、知と実践を切り離さすことなく結合する教育研究活動が充実するよう学部の運営に尽力してまいりますので、一緒に頑張っていきましょう。